科学的根拠に基づいた円形脱毛症の治療内容と効果｜患者さん用

治療と診断

円形脱毛症は、比較的軽度といわれる脱毛箇所が少ない場合は、特に治療等をしなくても自然治癒することもあります。これは、ストレスが引き金で発症した場合、ストレス解消するとともに円形脱毛症も改善されます。

しかし、重症のタイプに分類される脱毛が帯状に発生するタイプや、頭全体の髪が脱毛するような症状の場合は、ストレスがきっかけだとしてもストレスの原因がなくなるだけでは、症状が改善されないので、治療が必要となります。

※現在ストレスと円形脱毛症において発症の一つの誘因として精神的なストレスは定義されており、原因として科学的な根拠に乏しいと安易にストレスの関与を語るべきではないとしている。

円形脱毛症の主な治療法

円形脱毛症の治療は、症状や年齢等によりどのよう方法で進むかが選択されることが多いのですが、一般的に施される治療法は次の通りです。

ステロイド治療
円形脱毛症の発症は、自己免疫疾患です。免疫機能を抑える効能をもつステロイド剤が、円形脱毛症の治療にもよく使用されています。軽度の単発型円形脱毛症の場合は、ステロイの外用薬（塗り薬）が症状の改善に効きます。ステロイド剤は、外用のほか、直接注射するタイプや内服するたいぷもあります。症状に合わせて、これらを組み合わせて投与、治療します。進行が速い円形脱毛症に対して、ステロイド内服療法は高い効果がありますが、副作用もあるため、投与は短期間になってしまいます。しかし、ステロイド投与を中止すると、脱毛の症状が再発する場合もあります。

液体窒素療法
円形脱毛症の発症部位を刺激する治療法です。液体窒素を染みこませた綿棒や脱脂綿を脱毛部分に塗布します。脱毛の範囲が限られている場合に適応する治療法で、痛みが伴います。従って、子どもの患者にはあまり適用されません。

紫外線療法(PUVA療法)
円形脱毛症が発生している場所に紫外線を照射します。紫外線照射により、リンパ球の異常な動きを抑え、発毛を促進するという治療法です。発毛してくると紫外線の照射ができなくなってしまうので、円形脱毛症の再発も多いと言われています。

局所免疫療法
皮膚にDPCPかSADBE高濃度薬剤(1％)を貼付し、感作という処置をします。約2週間でリンパ球が反応する準備ができます。その1～2週間間隔で円形脱毛症の患部に低濃度から始めてかぶれたりしないよう様子を見ながら徐々に濃度をあげていく形で薬を塗布します。これにより、毛包の周囲で自己免疫反応を起こしているリンパ球に対して、その動きを抑える別のリンパ球が集まり、発毛を促すことができます。子どもでも適用可能なだけではなく、慢性化、重症化している患者さんにとって最も高い効果が見られ、副作用も少ない方法となります。ただし、即効性がないため、時間をかけた治療法となります。

その他、アトピー性皮膚炎治療にも使用される免疫抑制剤や末梢血管効果がある塗布剤、レーザー治療、漢方療法なども試みられています。治療の効果については、まだ十分な検証されていない状況です。

円形脱毛症は一見治りやすい事例もあるが、脱毛面積が広くなるほど難治なこともあり、皮膚科専門医であっても各治療方法の効果を検証し評価することは大変難しいのです。

現在、円形脱毛症（AA)において様々な治療法が提案されていいるもののエビデンス（Evidence＝科学的根拠）に乏しい物もあり信頼性の高い根本治癒に関わる治療法も確立されていない今、国内ではようやく「円形脱毛症診療ガイドライン」が作成されました。

推奨	推奨治療の評価	治療内容
Ｂ	行うよう勧められる	ステロイド局注局所免疫療法
Ｃ1	行うことを考慮してもよいが，十分な根拠がない	ステロイド内服点滴静注ステロイドパルス療法第 2世代抗ヒスタミン内服セファランチン内服グリチルリチン，メチオニン，グリシン複合剤（グリチロン R ）ステロイド外用塩化カルプロニウム外用ミノキシジル外用冷却療法直線偏光近赤外線照射療法（スーパーライザー療法） PUVA療法医療用カツラ（ウィッグ）
Ｃ2	根拠がないので勧められない	シクロスポリン A内服漢方薬内薬精神安定剤内服アンスラリン外用星状神経節ブロック催眠療法
Ｄ	行わないよう勧められる	鍼灸治療分子標的治療薬